あきよししまの人生記録

私の人生ややこしい。いろいろと煩わしい心の中、断ち切るすべを模索中。

母の病気

私が小学3年生のある日、母方の祖母が家に遊びに来た。そこで母が、「胸になんかできてる。」と言い、祖母がそれを触って、「ほんとだ。医者で診てもらった方がいいよ。」なんて言う会話をしていたのを覚えているが、後々それが乳がんだとわかった。母は入院し、右胸乳房を切除の大手術をした。私も弟もまだ小さかったので母の状態は一切説明されなかったが、我が家は一気に光をなくしたようになった。まだたった3歳か4歳だった弟はわけも分からず、すごく寂しかったと思う。子供は敏感に空気を読んで察するものだ。時々大人が集まって何やら深刻そうに話しているのを見て、思っているより悪いんだろうな、とは感じていた。母がいなくなってしまう不安と、大人が私たち子供に気を遣う空気の重苦しさでただただ怖かった。無邪気になど笑えない子だったが、みんなの前では子供らしさを装うわざも覚え、周りのどんな子たちよりも大人だった。

父は母の入院中、休みの日には午前中に私と弟を連れて母を見舞い、いつからか帰り道にどこかの倉庫のような所に寄って何か大きな荷物を車に積んでから帰るようになった。今思うと、その頃から家の一角にいつもいろんな物が積み上がっていたので、父はそれらを売って生活の足しにしていたのだと思う。父本人はもちろん、誰からもその話を聞いたことがないからわからないが、母の病気ですごくお金がかかって大変な時期だったのだろう。父の性格からして、誰にも言わず、誰にも頼ることなく一人がむしゃらに働いて工面したのかもしれない。物を売ってお金を作るなんて、口下手の父にはどんなにかつらかったろうに。